子沢山貧乏で無計画、そして借金を返済できない一家の物語
今回私は2009年にザ・ノンフィクションで放送された「漂流家族」を初めて視聴しました。
ザ・ノンフィクションは現在まで放送されている人間の生き様をそのままドキュメンタリー化している番組です。闘病、余命宣告、病気、堕落した生き方から、企業での活動など、良いも悪いも判断せずそのままその人物像を追い求めているというのが大きな特徴ですね。
それが故にこの「漂流家族」で追った竹下家は長い歴史を持つザ・ノンフィクションでも最凶、神回とも呼ばれ、多くの視聴者に衝撃を与えたとして今もなお話題になっています。
下の動画でも視聴が出来ます↓
実際見てみると、確かに衝撃的であり、想像以上でした。
私も今まで多くのザ・ノンフィクションを見てきましたが、人間の美しさ、儚さ、もちろん人間の愚かさや過ちも多く垣間見えてきましたが、今回はなんというか、ツッコミどころがたくさんあり、そしてただただ呆れるばかりって感じでしたね。
とはいえ、決してバカに出来ない、人ごととして見れないところもあり、人間多かれ少なかれ似たようなことをしている場面もあり、その些細な事で人生や家族を狂わせてしまうと思うと、学ぶべきところがたくさんあると思うのです。
今回はそんな「漂流家族」のあらすじと、学ぶべき事をまとめてみました。
漂流家族 竹下家のあらすじ
竹下家は父と母、そして姉妹6人の大家族です。
そんな大家族が北海道に移り住むところから話は始まります。
北海道に移住
竹下家は2000年、山村留学の制度を利用して一家で北海道に移り住みます。
山村留学とは?
-子供達が自然豊かな場所に留学する制度
・独自の寮、センターで指導員のもと、他の子供達と集団で生活する寮方式
・地域の家庭に下宿し、本物の地域の生活を体験できるホームステイ式
・地域の補助や制度を利用して家族で移住する移住式
などがある
竹下家はまさに「移住式」を利用して、一家で北海道に移ったというわけです。
ちなみに町の制度は、町が用意してくれた家に無料で住めるのですが、条件が
「三年以内に家を建てること」
でした。土地もタダで用意してくれるようですが、家の購入費用は自分で負担しなければなりません。
父は「都会じゃ学べないことを学べる」と言って移住を決断したそうです。が、実は埼玉のマンションのローンを払えず追い出されたからが後の真実と分かります。
前述の通り、山村留学とは本来子供達に自然や地域の生活を体験するためが目的でしたが、移り住んだ北海道浜頓別町も実は過疎化が深刻化し、仕事も無く若者がどんどん出て行ってしまいました。山村留学はそういった町の思惑もあったようです。それ故に、いろいろな問題点がありました。
そもそも仕事が少ない
仕事が無いから若者はどんどん町を出て行ってる訳なんで、仕事がほとんどありません。まあ、過疎化が進んでいるからこその町の政策だからある程度は仕方ないことだと思います。とはいえ町もこのような政策をする以上、雇用の斡旋にもっと協力するべきだと思います。
父は
「北海道ならではの田舎暮らしのような仕事が一番良かった。結局都会のようにあくせく働かないといけない」
と言っています。この時点で父の無計画さが浮き彫りになっていますね。まず完全なリサーチ不足です。そういう仕事があるかは、移住を決める前に事前に調査したり、現地に赴いてそういう仕事があるかを見つけ、仕事を取り付けてから移住するべきだったと思いますね。まあ、マンション追い出されてたから時間が無かったのだと思うのだけれども。
ついでに言うと酪農や農業は思った以上に辛い仕事です。父にその辛さを耐えられたかは・・ちょっと不明。父は町の斡旋でなんとか仕事に就きますが、それはあくまで季節雇用で冬には案の定解雇されてしまいます。
想像以上に寒い
北海道でも北に位置する浜頓別町は、北海道の中でも特に極寒の地域に属しています。冬になると氷点下20度になることもあるようで、暖房費などは節約出来ません。さらに田舎なのでそんな極寒で子供達の登校は歩いて30分程だそうです。
雪かきなど、都会では慣れない作業もこなさないといけないのです。
物価が高い
地方での生活なので、食料などの物価は全体的に安いというイメージですが、残念ながらスーパーで売られているものは本州産なども多く、輸送費などのコストも掛かるため、実際は都会の2~3割増しで売られ、以外とコストが掛かるということが分かりました。
そんな状況でも散財して貯金を使い果たす
父の解雇、物価高に加えて竹下家は3年以内に家を建てるための資金を集めなければなりませんでした。
しかし、そんな状況下にも関わらず冬の娯楽にと貯金のほとんどを使ってパソコンなど電化製品を買い込みます。ただでさえ年齢と安定した職業に就いていなくてローンも組めないのに、何をやってるんだという感じがしますね。
2001年元旦には何とか父の職が決まります。
竹下家、桜庭さんに保証人になってもらい家を建てる
2003年になると家を建てる期日が迫っていきます。
父は産業廃棄物処理業者の正社員になり、現場責任者を任されるようになり、母も同じ職場で働きます。ようやく収入も安定してきたようです。
しかし子供も大きくなり、何かと物入りとなり思うように貯金は出来ないようで、もともと年齢やまだ職も浅いせいか、銀行の融資も受けられなかったと考えられます。
そこで引っ越してきたときからずっとお世話になっていた桜庭さんという牧場の経営者に住宅ローンの保証人になってもらおうと相談に行きました。
桜庭さんは牧場の経営者で、牛舎の拡大などで1億円の借金がありましたが、地域のためならと快諾してくれました。それにより竹下家は30年2000万円というローンを借りることが出来たのです。
こうして竹下家は家を建てることを決意しました。これが悲劇の始まりとなります。
夫婦揃って辞表を提出 桜庭さん大激怒
2004年に入ると、父は会社と揉めるようになります。それが原因で夫婦揃って辞表を提出しました。
このことを桜庭さんに報告に行くと、桜庭さんも「仕事だけは絶対に辞めるな」と言っていたそうで、めちゃくちゃ怒られます。まあなんたって保証人ですしね。
竹下夫婦は何とか説得されて、辞表は撤回し思い直しました。
時が経ち、2008年。長女も大きくなり隣の枝幸市の水産加工会社に就職して、一人暮らしを始めました。子供も大きくなり、少しずつ負担も軽くなるかと思いきや、またしても事件が起きます。
父は産業廃棄物処理の会社で運営まで任されるようになりました。しかし、不景気により仕事が激減。そのうえ、父はまた会社と上手くいっておらず、度々ぶつかっていました。
そして5年前のフラッシュバックのように、またしても夫婦揃って辞表を出したのです。
そして再び桜庭さんに報告。もう桜庭さんも諦めの境地で怒る気にもなれなかったようです。実は最初に辞表を出したときも二人は都会に出て働くという選択をしようとしたのですが、今回はその案を実行し、家族総出で埼玉に出ることにしました。
一人暮らしをしていた長女も帰ってきて共に行くことにしました。
「いや、長女は就職も決まってたから一緒に行く必要なくない?」
さらに高校に通っていた三女と四女も高校を休学することになりました。この決断がまた大きな悲劇となります。
上京という名前の夜逃げ
家族は結局総出で埼玉の越谷に上京します。とはいえ、実は住む部屋すら決めずに上京してきたのです。いやいや、もう行き当たりばったり過ぎて、もはやもう救えないとすら思えてきました。
「もうなるようにしかならない」→「ならねえよ!」
「良かったことと言えば宝くじ当たったことくらい」→「宝くじ買ってんじゃないよ!」
と私も心の中でツッコミを入れまくっていました。
やっと住む家も決まりますが、敷金礼金に退職金の半分の50万円ほどを溶かしてしまいます。
さらに決め手はテレビや冷蔵庫の購入で退職金のほとんどを使い果たしてしまいます。
「いやいや、テレビ必要か?どうしてもならレンタカー借りてある程度家電持ってきた方が安いでしょ?」
「そもそもそんな経済状態で何で犬飼ってるの??」
母や子供も総出で仕事
その後家族は仕事を探し、家族で仕事を始めます。母は飲食店でパートタイム。次女はラーメン屋でアルバイト。三女、四女もアルバイトをすることに。
長女は仕事を探すがなかなか決まらないようです。というのも、父が正社員じゃないとダメだと猛反対していたからです。
「いやいや、そんな事言えた義理かよ・・」
「お前向こうにいた方が良かったよ!」→「その通りだよ!お前のせいだよ!」
という心のツッコミがもはや止まりません。そんな長女は誰よりも積極的に家事を手伝いますが、そんな父親に涙することも。
「父にとって自分たちはお金を入れてくれる人としか考えてないんじゃないかと思う」→「その通りだよ」
ともかく、家族総出で働けば、収入は月50万円ほどになります。しかし家賃と北海道の家のローンで半分以上を失う二重苦な状況です。
散財とローンの踏み倒しに桜庭さんがキレる
兎にも角にも、何とか生活を立て直して、ローンを払うためにも節約をしなければ!と普通の感覚なら思うところですが、この竹下家はそんな状況にも関わらず散財が止まりません。
都会という誘惑に勝てないのか、外食の回数は増えていきます。しかも大家族なので1回の外食で2万は超えてしまう有様。さらにカラオケにも行っているようでした。
「もう、ホントに何しに来たの?・・」
さらに救いようの無い悲劇が。またしても父が会社を辞めてしまいます。その言い分は
「北海道で上の立場でやっていたから下っ端は我慢できない」→「今の自分の立場分かってる?何様?」
その後はリーマンショックの影響も受けてもはや無職。
「お前、長女に正社員じゃなきゃダメだ!とか言ってなかった?・・」
ですが、最後の衝撃の事実が発覚します。
桜庭さんを着信拒否
こんなむちゃくちゃなやり用ですが、一番の衝撃は、実は上京してから北海道のローンを一度も払っていなかったという事実です。
ということは、ローンの支払いを迫られているのは当然保証人の桜庭さんです。桜庭さん自身も何度も竹下家に電話をしますが、なんと着信拒否。
致し方無しと桜庭さんは何も告げずに埼玉に押しかけます。これ考えてみて欲しいけど、当然旅費は桜庭さんが払ったわけですよね?もはや誠意も信頼もあったもんじゃありません。番組じゃなかったらもはや夜逃げじゃんとすら思ってしまいます。
そして急に押しかけた桜庭さんにもはやたじたじ。桜庭さんに家をどうするか聞かれると
「家を手放すつもりはない」
とのこと。ローンも払わず、保証人がその家をローンも払っているにも関わらず、手放すつもりはないって・・。この言葉に桜庭さんも大激怒。父にげんこつを喰らわせ、帰って行きます。
その後、なんとか引っ越し業者の見習いとして採用されます。
家を手放す
その後世間はリーマンショックの影響を本格的に受け、世の中は不況真っ只中になります。
竹下家もその煽りを受け、収入は北海道の時よりも少なくなっていました。そして結局、桜庭さんの約束も守らず埼玉に来てからローンを一度でも払うことはありませんでした。
結局竹下家は家を手放すことになりました。その後なんと母が失踪。一応連絡は来たらしいですが、家族とは距離を置きたいとのことでした。
ここで番組が終わりを迎えます。
払えもしないローンを組んで、保証人にローンを全て押し付けて、埼玉に来ても節約もせず、遊び歩いて、子供は高校を退学して、家を手放して、母は家族から離脱して、何も得たものもなければ、救いようのない話で終わってしまいました。
漂流家族、竹下家のその後
その後竹下家がどうなったかは、放送の続きはないので何も分かりません。しかしあまりにも最凶の話だったのでネット上では様々な噂やデマが飛び交っていました。
母はその後家に戻らず、そのまま離婚し、別の人と再婚したとか、死亡説まで唱えられていますが現在まで信憑性のあるものは確認されておりません。
一部私たちから確認できる情報があります。
・桜庭牧場は今も健在で桜庭さんは牧場を経営されている
-平成29年時点では、「桜庭牧場の過去・現在・未来」というテーマで経営事例の発表をしている
宗谷地域農業新技術発表会
・今も竹下家の旧マイホームは存在している。一時期は売りに出されていたらしいが、現在はどうなったかは不明
桜庭牧場はGooglemapでも確認できます。
その中には竹下家のマイホームの最近の写真も追加されています。ツーリングで訪れてみた人の情報では2023年時点では誰かが住んでいる感じはしないとのこと。もう不動産にも情報が載せられていないことを考えると、それでも誰かが買い取ったのか、それとも売りに出すのも諦めたのか、という感じですが、それはもはや分かりません。
竹下家は現在もどこかでたくましく生きているのかもしれません。まあ、何にせよ私は子供達は無事に各自学校を卒業して就職して、普通に幸せになっていることを願いたいなと思います。子供に罪はありませんし、幸せになる権利はありますからね。
漂流家族、竹下家から学ぶこと
この漂流家族の竹下家に関してたくさんの複雑な気持ちがあると思います。他人事としては半ば笑って見られる部分もあるし、人ごとのように感じるかもしれませんが、ここまでではなくても、私たちも少なからずこのような危ない選択肢をしている可能性があります。
私も家族を持っていますが、自分の決断が第二の竹下家のように家族を巻き込み人生を狂わせる選択になるかもしれません。だからこそこの漂流家族から反面教師として学んでいかなければなりません。
竹下家から学ぶこと
・例え行政であっても、甘い話には慎重に行動するべし
・何事も計画的に行い、リスクを取り過ぎない
・人の信頼は裏切らない
例え行政であっても、甘い話には慎重に行動するべし
今回悲劇の始まりはまさに浜頓別町の山村留学のポスターでした。
もちろん浜頓別町としても若い世帯に来て欲しいので、良いことばかり書いていたのではないかと思います。ただ、その裏には現実と悪いことやリスクがあることを知らなければなりません。
もちろん過疎化で若者が出て行っている理由は仕事が無いからです。故に仕事が無いことは目に見えています。そして住み始めてから物価が高いということを知りました。しかし事前に慎重にリサーチを行っていれば、どのような仕事があり、物価が高いことなどは十分に知ることが出来たでしょう。
そして土地代は負担してくれても、マイホームに掛かる資金もどのくらい必要で毎年どれだけ貯める必要があるのか、ちゃんと数字で計算していなければなりません。
例え行政や国が施行した制度と言えど、甘い話ばかりでないというのは十分に理解し、慎重に判断しなければならないのです。もっともマンションを追い出された竹下家、そしてあの無計画さぶりでは本当に何も考えずに逃げてきたという感じだったのでしょうが・・。
窮地に立たされると人は思考力を失うので、余裕があるうちに考えておくべきでしたね。
何事も計画的に行い、リスクを取り過ぎない
この竹下家の最大の欠点は明白で、完全なる無計画さです。
次の仕事先や子供の養育費などの事を何も考えずに仕事を辞め、返す充てや十分な計画も無いのに、他人に保証人になってもらい、家族で無計画に都会に働きに行ったこと。それにより家賃と家のローンの二重の負債に苦しみ、結局保証人が苦しむことになったという始末です。
にも関わらず、夫婦で酒、タバコ、都会に出ればカラオケや贅沢なご飯を楽しむ。まるで計画性を感じません。夜逃げしたことだけはむしろ計画的だなと感じてしまいます。
仕事を辞めるなら次の就職先などの算段を十分につけなければなりません。母は職場に残り、父は出稼ぎでなければダメなのでしょうか?北海道なら札幌に出た方が良かったのでは?
ちなみに、「何とかなる」というような言葉を何度か使っていましたが、現実世界は
「何とかなる、は何とかならない」
と思っていた方が良いです。
何とかなる人というのは、何とかなるだけの行動をしてきた人だけで、死に物狂いで節約や努力をしてきた人だけが始めて何とかなるのです。
「借金1億返しました!」
「ニートから社長になりました!」
みたいなどん底から這い上がって来た本とか伝説とかあると思うけれども、大抵の話はわらしべ長者的なやつではなく、泥にまみれて必死で頑張ってきた人が多いんですよね。こういう「何とかなる」を表面で鵜呑みにしてしまう人もいますが、それは極めて危ない考えですので、認識を変えるべきです。
人の信頼は裏切らない
この世の中で一番の資産は「人」であり、「信頼」です。「信頼」があるからこそ人は助けてくれるし、「信頼」があるからこそ人は何かを買ってくれます。
逆を言えば「信頼」の無いところにはお金がいくらあっても人は助けてくれないし、何かを買ってくれることはありません。故に「信頼」が一番大切とも言えます。
普通に考えて赤の他人がローンの保証人になってくれますか?自分がローンの保証人になれと言われたら絶対に嫌ですよね。桜庭さんはそれでも地域のためにと2000万円のローンの保証人になってくれたのです。こんなことは普通は起こり得ないことですよね。
だからこそ何としてもローンは返済しなければいけないし、何をおいてもまずは信頼を失ってはいけないということを最優先しなければならないのです。
それにも関わらず埼玉に来てはローンを一度も払わず、電話には着信拒否。そして節約して少しずつでも返すどころか、都会の誘惑に負けて遊んでしまう。これはもう救いようが無いですね。
桜庭さんからの信用は失うのはもちろんだし、テレビを見ていた全ての人がこの一家に大きな信頼を寄せることは無いでしょう。完全に1つの無責任な家族の話でしかないですからね。
私たちも「信頼」をもらったら、それに応える努力をしなければなりません。信頼の持つ力は思っている以上に壮大なのです。
さいごに
ザ・ノンフィクションは今でも放送され、人のありのままを描き続けているので、どんな最凶が今後放送されるかは誰にも分かりません。
しかし、人には多くの決断を迫られ、成功していく中で、大きなミスをして人生を転がり落ちる人も少なくありません。そんな現実すらもこの番組は見ることが出来ます。
そんな現実をリアルに鮮明に受け取り、多くの人から学び私たちはそれを自分事のようにしていかなければならないのかもしれません。
決してこの漂流家族も笑い事ではなく、私たちは気を引き締めて今日、明日のことを慎重に考えていかなければならない、そんな気持ちで見て欲しいなと思います。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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