鬼怒川温泉の廃墟から学ぶ歴史と教訓そして日本の未来

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鬼怒川の廃墟群が語ること

先日久しぶりに旅行へ行ってきました。今回は旅行好きの両親に誘われ鬼怒川温泉へ。
いつも仕事と家庭に追われているので久しぶりにリフレッシュしてきました。

栃木出身の私にとっては日光や鬼怒川へのアクセスは非常に良く、高速で1時間半程度で日光東照宮などの有名観光地へ到着できてしまうのです。ですが日光は数十回と行っているのですが、鬼怒川の温泉街で泊まるというのは久しぶりな感じがしました。

そして鬼怒川温泉の町並みを散歩するというのは初めての体験でした。鬼怒川といえば川沿いに多くのホテルが建ち並ぶ北関東随一の温泉街。あさや、三日月などの有名ホテルを間近で見てきましたが、今回一番見たかったのは鬼怒川温泉の廃墟群。

上の画像にあるような廃墟が立ち並んでいる光景はテレビやネットでご存じかもしれませんが、改めて間近で立ち並ぶ巨大なホテルの廃墟を目の当たりにすると荘厳な景色と感じざるを得ません。

人は死ねばその姿はいずれ消えていきますが、建物はすぐには消滅せず、かつての栄華とその後の姿を後世に残していく。かつてあれだけ活気に満ち溢れ繁栄し、建物の増築を重ねてきたホテルが今や消滅し巨大な廃墟群として存在し続けているのはなぜなのでしょうか?

鬼怒川の反映と衰退

日本はかつて高度経済成長を迎え、日本全体の景気は今とは比べものにならないくらい好調でした。企業はどんどん成長し、儲けを重ね、従業員数はどんどん増していきました。

そんな中今では考えられませんが、当時企業内では社内旅行が主流に行われ多くの従業員を引き連れホテルに泊まるというのが主流だったそうです。当時の好景気を考えると何百人もいる社員を連れて好景気に沸く会社はホテルで湯水のようにお金を使ってくれる。ホテルの大多数の部屋が埋まり、宴会場は人で溢れ、コンパニオンも雇ったりしてドンチャン騒ぎだったようです。

当然ホテル側もぼろ儲けで鬼怒川温泉は大いに賑わいました。日本全体の景気も良いので銀行もじゃんじゃんお金を融資してくれます。そのお金で他のホテルに負けまいと改装費用にお金を使っていきホテルもどんどん豪華に拡張を続けていきました。

ところが思わぬ出来事が起こります。バブル崩壊により日本全体の景気が一気に冷え込みます。当然日本国内の企業も大打撃を受け、事業縮小、大規模なリストラ、倒産などが横行します。もちろん企業も以前のような羽振りの良さはないので社内旅行している余裕なんてありません。それにより一気に鬼怒川に訪れる観光客も激減したのです。

ホテル側としては、事業拡大で銀行から多額の融資を受けた矢先でのバブル崩壊のため、事業が儲からないのに借金は返せないという状態が続きました。バブル崩壊により旅行は社内旅行から個人旅行にシフトチェンジ。しかし団体旅行で生業してきたホテルにとっては大規模な部屋数や大宴会場などを作ってしまったため、なかなか個人客に向けた部屋作りやサービスに移行できずにいました。

そうして2000年代を迎える頃には一部のホテルが巨額の負債を残し次々と倒産していきました。廃墟となったホテルは資金や立地の問題から解体するのは難しく、市や自治体も手をこまねいたまま現在の姿を留めています。

この鬼怒川の廃墟を目の当たりにして私たちは何を学べるでしょうか?

危機回避能力と方向転換の重要性

倒産したホテルの最大の原因は2つあります。それは

  • リスクヘッジが出来なかったこと
  • 方向転換が即座に出来なかったこと

まずリスクヘッジが出来なかった。これはそもそも日本全体に言えることですが、大幅な日本の好景気に沸いていつしかこう考えていたことでしょう。「この好循環は一生続く」。戦後から90年代は日本は経済成長を続け衰退した経験はあまりありません。それを数十年と続いていくとその中で生きてきた世代はこう考えるのも無理はありません。

さらに湯水のように湧く利益を見ているうちに人は盲目になります。私たちだって目の前に1億円が飛び込んだら、「人生勝ち組だぜ!うひょー!」という気持ちになりそうじゃないですか。いずれこのバブルや好循環が止まることを考えどのように経営を見直すべきか・・なんてことは考えない、いや考えたくなくなるのかもしれません。

第二次世界大戦でも日本はロシアに勝利したという甘い盲目から抜け出せずに国力差の違いすぎるアメリカに無謀な戦いをして、そして敗北しました。我々日本人はそういった盲目から抜け出せずに徹底的に潰れるまで酔いしれてしまう、そんな歴史なのかもしれません。

しかし、人生で生きているうえでまさか!という危険な事はいくらでも起こり得ます。リーマンショックやコロナ、東日本大震災など、ここ十数年の出来事をたどるだけでも人類が予測し得ないことが起きています。もちろん全てのリスクを回避することは不可能です。ですが、「こういう事が起きるかもしれない・・」という予測はある程度立てて行動しておく必要があるということです。

その上で即座に方向転換すること。バブルがはじけ、団体旅行客が激減した。その事実に対してじゃあどうするべきかを考えなければいけません。経費の削減、ターゲットの選定など。恐らくこういったことを上手く出来たホテルが現在まで生き残っているホテルなのでしょう。

例えば鬼怒川温泉で一番有名なあさやホテル。千と千尋に出てきそうな大きな吹き抜けが印象的ですが、このホテルこそ老舗でありながら上手な方向転換でこの不足の自体を脱出したホテルではないでしょうか?団体客から個人向けに客層をシフトチェンジし、ビュッフェや貸し切り風呂、そして高いサービスが数々の章を受賞している名物ホテルです。

公式サイトはこちら
https://www.asaya-hotel.co.jp/

その他のホテルも伊藤園グループや大江戸温泉物語などの有名なグループに経営を委ねることで生き残りを図ったホテルもあるようです。有名グループの手腕により客足が戻ったホテルも多いのではないかと予測しています。

何にしても鬼怒川ホテルから学べるのは時代の反映と衰退。それに呑み込まれていく者、試行錯誤して生き残っていく者。その2つの姿を今も見ることが出来るスポットであり、学びのある場でもあるのでしょう。

鬼怒川を教訓に日本の未来を見る

ここまで鬼怒川の繁栄と衰退を見てきましたが、鬼怒川という限定的な地域に限らず日本全体でもこのような荒波が起こる可能性がありそうです。

それがトヨタの衰退です。2024年現在不正問題が大きなニュースとして取り上げられています。トヨタと言えばガソリン車で世界中に拠点を構える日本が誇る大企業ですが、こういった不正問題や世界中がEV車へのシフトチェンジ、そしてガソリン車の撤廃をヨーロッパ諸国が決める中で本格的な逆風がトヨタと日本に吹いているという事実です。

ところが多くの人に話しても、これを信じる人、信じたい人は多くありません。

「世界に誇るトヨタの技術ならば、中国やアメリカには負けない」
「ガソリン車はこれからも売れ続ける」

ところがこれらの言葉には私は説得力が無いと感じています。日本は既にアメリカや中国に技術力で負けているというのも事実ですし、EV車が世界中で売れているというのも事実です。これこそ現実を見ない、見たくない、そして廃れていった側の鬼怒川のホテルの心情を映しているようではありませんか。

もちろんガソリン車が急激に衰退しない可能性も考慮するべきだと思いますし、トヨタの資金力はまだまだ健在です。ですが、まずは「トヨタは絶対大丈夫!」という甘い幻想を打ち破り、最悪の事態に備えることも考慮しなくてはいけない時期です。

まず根拠としてガソリン車の技術とEV車の技術は全然違います。そしてアメリカのテスラや中国のBYDといった企業はEV車の技術において圧倒的な技術を持っています。同じ車業界で戦いを挑むといってもジャンルが少し違うのです。トヨタがEV車でこれらの企業と渡り合うということは

「イチローは野球のレジェンドだからサッカー選手になってもブラジルを破れる選手になるよ!」

みたいな期待を込めているようなものです。

同じ球技だけど、ジャンルが違うよと。イチローは今から参入してなれるのか?サッカー選手に??。勝てるのか?ブラジルに??
そんな疑問を湧きたくなりますが、そんな根拠無き期待に湧く人が大勢いるということです。

そして中国のBYDは今年既に日本に本格参入しています。私の住んでいる栃木県でもすでに宇都宮に店舗を構える看板が立っていました。ガラケーからいつの間にスマホにシフトチェンジしたように、車もガソリン車からEV車にいつの間にか変わる。そんな未来の構造も想像できます。

日本にはトヨタを初めとするガソリン車の会社があり、その下請けなどのサプライチェーンがあります。その全てが大打撃を受ければ日本の経済も大打撃を受けます。もちろんそうでない未来を考えても構いませんが、そうなる未来に備えて自分は、会社はどうするかの戦略を今から立てなければならない。

まずは危機意識を持ち、考える。そして行動に移していく。
これこそが鬼怒川から学べる未来の構造だと私は感じています。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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