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ユダヤ人を差別し喜劇にした下劣さの象徴
今回読んだのはシェイクスピアの喜劇の1つである「ヴェニスの商人」、のマンガ版です。
シェイクスピアという名はもちろん有名でしたが、「ロミオとジュリエット」を始め、実際どんな内容なのか詳しく知ることはありませんでした。
ということでマンガ版で読んでみようと最初に読んだ「ヴェニスの商人」でしたが・・・。まあ酷い(笑)。
何が酷いってこれは喜劇というより、悲劇であり、主人公がまるで正義のように描かれていますが、差別されているユダヤ人に対して徹底的にいじめぬいたうえで、自分たちは何の罰も受けずにハッピーエンドを迎えるというトンデモなお話でした。
いじめられっ子だった私にとっては、いじめたそいつがハッピーエンドを楽しく迎えるようなストーリーを見させられているような気分でした。
ですが差別や偏見というのは当事者達にとってはそれは当たり前のように行われることであり、善悪という区別も無いのかもしれませんね。なんせイギリス人はこの話は喜劇でありこの話を見てみんな「ざまーみろ」と手を叩いて喜んでいたんでしょうから。さながらユダヤ人に対する公開処刑のように。
だからこそ、差別といじめとその正当化の象徴である「ヴェニスの商人」を紹介し、いかにユダヤ人が差別や迫害を受けていたか、そして日本でもあった差別や現代の差別について、ここから理解していかないといかんなと思ったのです。
そんな「ヴェニスの商人」の簡単なストーリーと私自身の学んだこと、考察を加えて話していきましょう。
ヴェニスの商人のあらすじ
ある青年がユダヤ人の高利貸し、シャイロックにお金を貸して欲しいと頼むところから始まります。
頼む、金を貸してくれよ
ダメだ!お前みたいな若造は信用できないな!
じゃあ、り、利子を倍にしても良い!
ニヤリ
青年、待ちたまえ!強欲なユダヤ人なんかに金を借りることはない!
ア、アントーニオ!?
強欲な犬畜生め!
ぺっ!
こいつ!つばを吐きかけたな!
という感じでユダヤ人はキリスト教では利子をつけて人にお金を貸すことを禁じていたので、利子をつけて人にお金を貸しているユダヤ人は軽蔑されていました。
バサーニオとアントーニオ
あるとき、アントーニオの親友のバサーニオが相談に来ました。
ずいぶんと派手に暮らしちゃってさ、財産を使い切ってしまったんだ。そこでアントーニオ、君からお金を借りたい。借金を返す手はずもあるんだ!
良いが、そもそもどうやってその借金を返すのだい?
莫大な遺産を相続した女性がいる。しかし多くの人が彼女を狙っているんだ!だからそいつらに張り合えるくらいの財産で彼女のハートを射止めて結婚してみせる!
ふむ、分かった!でも俺の財産は出航した船の上にあるので今すぐは貸せない。保証人になってやるから、街へ出て金を貸してくれそうな奴を探してみてくれ。
なんとバサーニオは遊び歩いたあげく、お金持ちの女性と結婚してその財産でアントーニオの借金を返すと言ってきたのです。この時点で考え方も最低と思いたいですが、アントーニオは快くお金を貸すことに同意します。そしてバサーニオは街でお金を借りれる人を探すのですが、みつけた相手は・・・・
1ポンドの肉が欲しい
3000ダカット、3ヶ月、保証人はアントーニオだ。どうだ?
うむ。申し分は無いが、でもアントーニオさんは利子をつけてはならないと言っていましたが、それに犬畜生とまで呼ばれ、つばを吐かれた。そんな私にお金を借りに来るのは・・どうなんですかね?アントーニオさん?
ああ、だが今回は友人のために特別だ。敵に貸しを作ると思え。そうすれば利息も違約金も取りやすいだろう。だが忘れるな!俺はこれからもお前を犬畜生と呼び、つばを吐く!
ほう・・・じゃあ、分かりました。そのお金は無利息でお貸ししましょう。でも万が一でも約束を反故にした場合は、あなたの体の肉を1ポンド(450グラム)頂きます。良いですね・・
良いだろう!期限に遅れることはないからな
この野郎!もし返済できない時は・・・覚えてろよ
その後、景気づけの宴会にシャイロックも呼ばれ家を留守にしています。その間にシャイロックの娘のジェシカがとんでもないことをしでかしていました。
来てくれたの!嬉しいわ!
ジェシカ、今のうちに一緒に駆け落ちするぞ!
パパの財産も持って逃げましょう!
アントーニオの船、沈む?
翌日になり、シャイロックの娘と財産が全て消えていることが発覚し、シャイロックが大激怒します。
俺の娘が!財産が!!全部キリスト教徒に盗まれてる!!
シャイロックのやつ、荒れてるな・・
おい、お前ら!アントーニオの連れだろう!娘が駆け落ちすること、知ってたんだろ!
し、知らねえよ・・
なぜ俺の邪魔をする!俺がユダヤ人だからか?良いか!ユダヤ人だって人間だ!内蔵も手足もある。パンも食うし、屈辱を受けたら復讐もする。お前らと同じだ。アントーニオに伝えとけ!期限に遅れたら・・覚えとけと!
そして、なんとアントーニオの船が沈んだという情報を耳にします。そして期限がついに過ぎてしまいます。
おい、約束の期日は過ぎたぞ!どうなってんだ!!
シャイロック、話を聞いてくれ!もう少し待ってくれないか?・・
覚えてろよと言ったよな?裁判に掛けてお前の体の肉を1ポンド頂くぞ!
その頃、バサーニオは見事に金持ちの令嬢ポーシャのハートを射止めて結婚することになります。
バサーニオさん、私と結婚しましょう!
もちろんだ!
私の指輪をお渡しします。ただし、これは絶対に失くしてはなりません。これが無くなるときは、あなたの愛がなくなったものとみなします。
分かった!ん?アントーニオから手紙が来ている?
・・・なんだって!借金が返せなくなってシャイロックに裁判に掛けられようとしているだと?
どうしたの?
実は私は親友から借金をしてここに来たんだ。その親友が3000ダカット取り立てられ、今まさに窮地に立たされているんだ・・
3000ダカット?それだけ?なら私はその10倍用意できるわ!それを持って親友の元に行ってきなさい
ポーシャ・・ありがとう!
私もこっそり後をつけよう
バサーニオは友人から借金をしてここに来ただけではなく、なんとポーシャの財産を使って工面もしてもらうというとんでもない奴。しかしポーシャは快く貸してくれます。
裁判へ
シャイロックよ!いくらお前でもさすがに1ポンドの肉を取り立てたりはしないだろう?慈悲の心を期待しているぞ。
いいえ、証文通りに取り立てさせて頂きます。この要求を却下すればヴェニスの法律や自由が疑われますよ。
なんて奴だ!人でなし
じゃあ聞くが、お前らはなぜ奴隷や召使いをこき使っている?お前らにとって彼らは「物」だろ?なぜ彼らに自由や平等を与えないんだ?金で買った「物」に過ぎないからだ。それと同じようにこの男の肉も金で買った「物」だ。それと何が違うか?
くっ!・・・
待て、シャイロック!ここに6000ダカットある。これで手を打たないか?
断る。証文通り取り立てるぞ
この裁判実に難しい案件なので、ある法学者に委ねるとする
ここで若い法学者が現れるのですが、実は男装したポーシャ。
この案件、確かにシャイロックはアントーニオから1ポンドの肉を切り取れる権利がある。準備をしろ。
アントーニオ。貴様の心臓に近い肉を頂くぞ!
ここまでか・・・
待て、シャイロック!お前には一滴の血を奪うことは許されない。血を一滴も流すことなくきっかりと1ポンド取るのだ。分かってるな?
え?いや、そんなこと出来るわけ・・・
もし破ればその行いは殺人とみなし、財産は没収しお前を死刑にする
な・・・・?分かった、じゃあその6000ダカットで手を打ってやる
それはダメだ!お前は公然とそれを拒否した。そしてお前にやれるのは証文通りのものだけだ。
ふざけんな!俺は帰る
待てや!ヴェニスの市民でない人間が市民の命を奪おうとした場合、半分は被害者に与えられ、半分は国に没収される。そして犯人の命は大公様に委ねられる。判決はいかに?
お待ちください!シャイロックの財産の没収はお許しください。その代わりこの男の死後財産は娘夫婦に譲ること、もうひとつはキリスト教に改宗することをお許しください。
異論はないな?シャイロック
・・・・はい
そうして無事アントーニオは救い出され、シャイロックは全財産と尊厳と宗教と娘を失った。
一方バサーニオとアントーニオはポーシャの元に戻り、ポーシャも実は裁判官が自分だったと言うことをお互いに話すのでした。
ハッピーエンドになって良かったわね。ちなみにアントーニオさん、あなたの船は沈んでなかったそうよ
なんということだ!じゃあ財産は無事だったのか?
良かったじゃないか?さあ、みんなで宴をしよう
ヴェニスの商人は喜劇か?悲劇か?
という話でしたが、いかがだったでしょうか?
これは悪党を成敗した男達の物語なのでしょうか?それともユダヤ人を差別し、とことん貶めた汚い人間を美化した話でしょうか?本当の悪人はシャイロックなのか?それともアントーニオなのか?少なくとも私は後者だと考えています。
これがシェイクスピアの「喜劇」というやつです。これを見てイギリス人は「ざまーみろ」とケラケラ喜んで絶賛していたということです。
シャイロックは財産を奪われ、娘を奪われ、宗教も失い、復讐することも出来なかった。しかしそこに同情する者は誰もいなかった。これは当時のユダヤ人がいかに迫害され、差別されていたかがよく分かる話だということです。
シャイロックの方がどちらかと言うと人間らしいセリフを吐き、的を得た言葉を残しています。
ユダヤ人だって人間だ!内蔵も手足もある。パンも食うし、屈辱を受けたら復讐もする。お前らと同じだ。
お前らはなぜ奴隷や召使いをこき使っている?お前らにとって彼らは「物」だろ?なぜ彼らに自由や平等を与えないんだ?金で買った「物」に過ぎないからだ。
それに対しアントーニオはどうだったでしょうか?
強欲なユダヤ人なんかに金を借りるな!仕方ないときはお金を借りるが、俺はそれでもお前を犬畜生と呼び、つばを吐きかける!
シャイロックをかわいそうと思う人も増えた
時代は変わり、成功者やお金持ちは大抵ユダヤ人であり、ユダヤ人に対する見方も見直されてきました。
ユダヤ人は今や優秀な民族でありそれはユダヤの教えがあるからということは以前解説したとおりです。
子供と読み、考えたいタルムードの小話。成功者が多いユダヤ人が子供達に教えていること
しかし、キリスト教にとってはお金儲けをしたり、利息をつけてお金を貸す高利貸しは卑しい職業とされていました。しかしながら、今はお金儲けの企業、そして金融業だらけです。
ユダヤ人は国を追われたから仕方なくそんな卑しい職業に就くしかなかったわけですが、それでも彼らが長く生きてこられたのはなぜでしょうか?
利息が付いてでもお金を借りたいと思う人がたくさんいたということです。つまり何だかんだで彼らは必要な存在だったということです。
冒頭でもユダヤ人にお金を貸して欲しいと頼む人がいて、結局アントーニオもお金を借りるという始末。必要としながらも不当に扱う始末なわけです。
それってお前らどうなの?
しかしながらこのように社会や人々から必要とされながらも、不当に粗暴に扱われた人々は昔も今もいるのです。
日本における穢多、非人。国に仕事を頼まれながら迫害された現状
当然日本においてもそのような差別と迫害された人間達が存在しました。それが穢多、非人と呼ばれる人たちです。
彼らは死牛馬の死体の処理や、動物を加工して毛皮にしたり、罪人の処刑と遺体の始末などをしていた者たちです。日本ではそうした血が付く仕事を汚らわしい仕事だとして忌み嫌われていて、もちろんそういう仕事を生業にしている人たちも嫌われ、士農工商という人間としての身分も認められませんでした。
しかし、動物の死体の処理をすることはもちろん必要だったし、毛皮を必要とする人もいました。罪人の処刑やその死体の処理も国に頼まれ、その汚い仕事を引き受けてくれる人がいたから成り立っていたわけです。
人が嫌がる仕事を進んでやってくれた人がいるにも関わらず、差別し嫌う。
それってお前らどうなの?
と言いたくなりますが、それは昔に限らず現代にも同じように差別が存在します。それが派遣と社員という身分格差です。
派遣は使い捨てが当然、仕事出来ないという偏見と差別の現代
現代における日本は少子高齢化であり、深刻な人材不足に陥っています。働き手がどの業界でも足りていないからこそ、派遣さんが応援に来ているわけです。
本来なら企業にとってありがたい存在なはずですが、そうした派遣スタッフや外国人を見下す人間が後を絶たないのが現状です。そう、派遣制度というのは結局のところ現代におけるユダヤ人の差別や穢多、非人という制度とあまり変わらないと感じています。
社員だからと楽な仕事だけして、面倒な仕事を押し付け自分たちは仕事しない。私もそんな経験をしたことがあります。そのくせ給料は良いことなどを鼻にかけてくるような社員もいました。
私は頑張ってそこには欠かせない程の売り上げを叩き出して、そして辞めていきましたけどね。
このようにヴェニスの商人ような差別は現代でも根付いていて、人の身分や不幸を後ろ指指して見世物のようにしているというのは決して昔の話ではないんですよね。
だから改めてあなたは自分の周りを見て欲しいと思うわけです。今あなたの会社は必要とされている人を必要に扱えていますか?平等に接していますか?
是非今一度これらの話を胸にしまいながら自分に問いて、人を尊重しながら生きて欲しいと思います。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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